脳神経外科医が不足している理由とは一体何なのでしょうか。
最近は、若い医師が「外科離れ」してきていると言われています。
特に脳神経外科では、医療技術の進歩によって専門的な治療が多くなり、脳神経外科医を専攻しない若い医師が増えているようです。
医学生としては、実際の状況を知った上で自分が専攻する診療科を選びたいです。
そこで、脳神経外科医の仕事内容や医師数の状況などについて解説します。
脳神経外科医の不足|脳神経外科医の仕事内容
脳神経外科医は、脳や脊髄などの神経系全般にわたって治療を行う専門医です。
脳神経外科で診察・治療をする代表的な疾患には、脳血管障害、頭部外傷、脳腫瘍、パーキンソン病、てんかんなどがあります。
脳神経外科も外科のひとつの分野であるため、治療手段としては開頭手術やカテーテルを使った手術などを行っています。
また、脳や脊髄の治療は、患者の病状によってからだに後遺症が残る場合も多いです。
手術をする前に意識のない患者もいます。
そのため、患者や家族に治療の方針を説明し、後遺症などのリスクについてインフォームドコンセントをすることも、脳神経外科医の重要な仕事です。
脳神経外科医の不足|脳神経外科医の人数
2016年に厚生労働省が行った「医師・歯科医師・薬剤師調査」の結果では、全国の脳神経外科医は6,232人いました。
これは全ての医師の約3%にあたります。
脳神経外科医は、男性の医師が圧倒的に多いことが特徴です。
男性と女性の医師の比率は、94:6(男性:女性)となっています。
最近では、若い医師の「外科離れ」が言われていますが、実は脳神経外科医の場合には、ここ数年の人数に大きな変化がありません。
年 | 脳神経外科医の人数 (人) |
---|---|
2016 | 6,232 |
2014 | 6,015 |
2012 | 5,892 |
それにも関わらず、「脳神経外科医が不足している」と言われるのは、外科の分野全体の医師数が減ったり、脳神経外科の専門性が高くなったりしてきていることが理由と考えられます。
脳神経外科医の不足|脳神経外科医は不足している理由
脳神経外科医が不足していると言われる主な理由は、次の2つです。
外科の分野の医師が減っている
脳神経外科に関わらず、外科の分野全体の人数でみると医師の数は減ってきています。
厚生労働省の調査では、外科で働く医師数は、2012年から2016年の4年間で約1000人の減少がありました。
こういった外科分野の医師の減少から、脳神経外科医の人数も不足してきていると言われるようになってきたと考えれます。
高度な医療を提供できる医師が減っている
また、医療技術の進歩に伴って、脳神経外科医の専門性が高くなってきています。
しかしながら、高度な専門性に合わせた医師の教育や人材確保が難しく、思ったように後進を育てにくい現状があります。
高度な医療ができる医師が高齢化し、医師の教育や人材確保が難しくなってきていることが、脳神経外科医が不足していると言われる所以になっています。
脳神経外科医の不足|現役の医者が脳神経外科を選んだ理由
現役で脳神経外科医として働いている医師は、どのような理由で脳神経外科を選んだのでしょうか?
もっとも多い理由は、脳や脊髄などの神経系の疾患に興味があることです。
神経系の疾患は多種多様です。
脳や脊髄の複雑な病態を確認しながら、患者に治療を提供できることに興味を持ったことで、脳神経外科医を選ぶ医師が多いようです。
また、患者の病状によっては、薬では治療が困難なケースであっても、外科であれば救えるケースもあります。
医療の知識や技術を高めて、自分の手で患者を救えることに魅力を感じ、脳神経外科医を選んだ医師もいます。
高度な医療技術を身につけて、患者に還元できることが脳神経外科医の魅力と言えるでしょう。
脳神経外科医の不足|脳神経外科医のやりがい
脳神経外科医のやりがいは人によってさまざまですが、共通して言えることは、高度な医療技術で患者を救えることです。
特に脳の疾患が原因で病院に搬送されてくる患者には、意識のない命の危険性があるケースも多いです。
手の施しようがない患者もいる中で、なんとか自分たちの力で瀕死の状態の患者を救えることが、医師としてのやりがいとなるでしょう。
また、意識のない患者の治療では、時には家族と協力して患者の気持ちと向き合う必要もあります。
手術をして命が助かっても、寝たきりなどの可能性があるからです。
脳神経外科医は、患者さんの命や家族と向き合って治療ができる分野です。
脳神経外科医の不足|自分の興味ある分野を専攻する
脳神経外科医は、自分の高度な医療技術で患者を救える分野です。
専門的な技術を持つ医師の教育や人材育成の確保がしにくい状況にありますが、もっとも重要なことは、「自分の興味のある分野を専攻すること」です。
医師として長く働き、知識や技術を高めていくには、まずは自分が興味を持てることが必要です。
専門とする診療科を専攻する時には、自分の興味がある分野を選ぶようにしましょう。